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行政書士高橋隆一郎事務所

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バイスティックの7原則とは何か

私は行政書士事務所を運営する傍ら、「リーガルソーシャルワーカー」として、福祉事務所にて生活困窮者支援を行っております。

 

新型コロナウイルスの影響は医療現場への多大なる影響に止まることなく、経済活動の停止状態に伴う市民生活の困窮にもつながってきていることは、福祉事務所の新規相談者件数の多さからも強く感じることです。そして、この経済的困窮というものは非常に厄介なもので、人の心理状況の少しづつ圧迫し追いつめられるようになり、心の余裕を失わせるものです。ウイルスそのものも非常に恐ろしいのですが、こういう社会環境の変化というものは人間の本質を炙り出す作用があり、より出口が見えない恐怖をともなうものだとつくづく感じます。

 

ソーシャルワーカーとは援助を求めている人に対して相談を受けることで解決策を模索し、より良い方向に導いていくことが求められます。ところが、量的圧迫が心の余裕を奪い、本来のあるべき姿を失ってしまうものなのです。市民社会も同様で、平時なら出来る優しい対応がどうしても出来なくなりがちで、むしろ攻撃的な社会の雰囲気を作ってしまうものです。緊急時代宣言が出されている現在などは、まさにそうであると言えるのではないでしょうか。

 

対人援助にかかわる援助者の行動規範として有名なものに「バイスティックの7原則」と呼ばれる定義があります。アメリカの社会福祉学者のバイスティックさんが定義した相談援助技術の基本です。

 

日常生活の中で、悩んだり、迷ったり、焦ったり、怒ったり、感動したりと、いろいろな感情に心が揺さぶられる事ってありますよね。私たちケアマネジャーもさまざまな方との交流の中で、いろいろな感情が心の中に錯綜して、収拾が付かなくなることがあります。

 

そんなときは、一旦立ち止まって、振り返りながら、自分の仕事の足跡を検証してみるようにしています(内省=自分の考えや行動などを深くかえりみる事)。これは悪い状況に陥った時だけでなく、結果が良い時も行うようにしています。そのときに「バイスティックの7原則」が役立ちます。この原則に沿って検証する事によって、反省や、気付きが得られ、自分自身を戒めたり、逆に励ましてサポートしたりする事の必要性を認識することができます。

 

 

  1. 個別化の原則

 

クライエントの抱える困難や問題は、どれだけ似たようなものであっても、人それぞれの問題であり「同じ問題は存在しない」とする考え方。この原則において、クライエントのラベリング(人格や環境の決めつけ)やカテゴライズ(同様の問題をまとめて分類してしまい、同様の解決手法を執ろうとする事)は厳禁となる。

 

※自己点検:外面的に同じような状況に見えても、人それぞれ育ってきた環境が違い、価値観も違う。今目の前にいる人は世界に一人しかいないということを肝に銘じておかなければならない。援助がパターン化していないか。偏見や先入観にとらわれていないか。自分のペースで話を進めていないか。「忙しそうですね」と言われていないか。

 

  1. 意図的な感情表現の原則

 

クライエントの感情表現の自由を認める考え方。特に抑圧されやすい否定的な感情や独善的な感情などを表出させることでクライエント自身の心の 枷かせを取り払い、逆にクライエント自身が自らを取り巻く外的・内心的状況を俯瞰しやすくする事が目的。またワーカーもクライエントに対しそれが出来るように、自らの感情表現を工夫する必要がある。

 

※自己点検:話しやすい雰囲気を意識しているか。座る位置はそこで良いのか。開かれた質問と閉じられた質問を意識しているか。リラックスできているか。同じ流れの中に入れているか。

 

  1. 統制された情緒関与の原則

 

ワーカー自身がクライエント自身の感情に呑み込まれないようにする考え方。クライエントを正確にかつ問題無くケース解決に導くため「ワーカー自身がクライエントの心を理解し、自らの感情を統制して接していく事」を要求する考え方。

 

※自己点検:自分の感情を自覚できているか。今抱いている感情は誰の感情なのか。共感の及ぼす過度な感情移入をしていないか。目的を意識しながら反応できているか。時期は適切か。急ぎすぎていないか。安易な情緒的関与をしていないか。平常心は保てているか。

 

  1. 受容の原則

 

クライエントの考えは、そのクライエントの人生経験や必死の思考から来るものであり、クライエント自身の『個性』であるため「決して頭から否定せず、どうしてそういう考え方になるかを理解する」という考え方。この原則によってワーカーによるクライエントへの直接的命令や行動感情の否定が禁じられる。

 

※ 自己点検:クライエントの人となりを吟味しているか。今起きている現実をありのまま受け止められているか。ギアはニュートラルに入っているか。ハンドルにあそびはあるか。

 

  1. 非審判的態度の原則

 

クライエントの行動や思考に対して「ワーカーは善悪を判じない」とする考え方。あくまでもワーカーは補佐であり、現実にはクライエント自身が自らのケースを解決せねばならないため、その善悪の判断もクライエント自身が行うのが理想とされる。また人間は基本的に当初において自らを否定するものは信用しないため受容の観点からも、これが要求される。

 

※自己点検:違う角度からもみるようにしているか。多面的に捉えているか。色目めがねをかけていないか。木も森もみえているか。常識という枠にとらわれていないか。

 

  1. 自己決定の原則

 

「あくまでも自らの行動を決定するのはクライエント自身である」とする考え方。問題に対する解決の主体はクライエントであり、この事によってクライエントの成長と今後起こりうる同様のケースにおけるクライエント一人での解決を目指す。この原則によって、ワーカーによるクライエントへの命令的指示が否定される。

 

※自己点検:今目の前にいる人が本来持っている生きる力や強さはどのくらいあるのか。本人の意思をしっかり確認しているか。実際発した言葉は本心なのか。緊急性はあるのか。周りの人の援助は期待できるか。援助が行き過ぎていないか。働きかけによって解決できる力が発揮できる可能性があるか。

 

  1. 秘密保持の原則

 

クライエントの個人的情報・プライバシーは絶対に他方にもらしてはならないとする考え方。いわゆる「個人情報保護」の原則。他方に漏れた情報が使われ方によってクライエントに害を成す可能性があるため。

 

※自己点検:秘密保持を意識しているか。個人情報の使用にあたってクライエントに不安をあたえていないか。個人情報の管理はしっかりできているか。

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