福祉サービス組織と経営
福祉サービス組織の特性
福祉サービス組織は他の事業形態組織と異なり、より厳しい法的規制や完全なる自由市場ではない等の制約が存在する一方、その時々の社会経済状況等、取り巻く外部経営環境に対応し、多様性のある利用者ニーズに応える競争原理にさらされ、一般事業形態と同様の経営努力が求められる。
福祉サービス組織経営は、その経営理念を確立し、経営者のリーダーシップの下に利用者に対してサービスを提供することにより成立し、財政的基盤がその行動を支えている。
集団の力学とグループ・ダイナミクス
集団とは相互作用を行う人の集合体であり、多様な価値観等が何らかの力学を発生させる。集団と参加者間で働く力を集団の凝集性と呼び、それが高いほど集団目標に向かって努力・生産性向上につながるとされている。この傾向を強化する方法として、集団の小規模化等、様々な方策が考えられる。
他方、当該凝集性が高まり過ぎると様々な弊害が発生する。例えば、集団浅慮と呼ばれ、集団と外部環境が隔絶されていると、集団意思決定が短絡的になり、画一的な同調圧力が働きやすい。また、集団傾向とは、親近感が強いことが責任所在を不明確となし、選択がリスクの高い方に大幅にシフトしてしまうことである。さらに、集団内部に対立等のコンフリクトが発生し易く、集団の業績を低下させる。
リーダーシップの基礎概念と理論
集団の現状を的確にアセスメントし目標達成に向かわせる能力をリーダーシップと呼び、専門知識・技能を保有する個人的技能等が重要となる。リーダーシップが効果的に発揮されるためには、集団活動を支える受容者の存在、その意見等をまとめ集団内に周知させる共有課題の徹底、そして、正しい規範に基づく意思決定・行動がそれである。
リーダーシップ理論は、行動パターンに注目したレヴィンやリカート、ブレーク&ムートン、そして日本人の三隅二不二によるPM理論がある。PM理論では、集団の目標達成行動と集団維持行動の2次元で類型化し、PM型→M型→P型→pm型の順で、メンバーの同期水準が高いとされている。また、フィードラーの状況適合理論や、部下の能力・成熟度合いに応じてスタイル変化するSL理論が有名である。
福祉サービス組織におけるリーダーシップ
措置制度の時代が終わり、今後の福祉は経営の部分を重視していくことが求められる傾向にある。その為にも、自分達の力で時代を読み、組織改革を進め、創意工夫による改革を進めることは生き残りの必須条件となり、集団力学とリーダーシップ理論を理解し、バランスよくミックスしたリーダーシップが求められる。
福祉サービスならではの特徴として、365日24時間継続したサービス等があり、多くの時間はマンパワー不足に陥る。この様な状況下、組織全体を俯瞰し動ける人材を育てていくことが重要である。特に非常事態が起こった際に臨機応変な対応・的確な指導が出来ることは他のメンバーの信頼を得やすく、その姿勢が自ら考えて組織のために行動するスタッフ育成にもつながると言える。