社会保障~皆年金制度の仕組みと支給事由~
1. 国民皆年金制度とは
国民皆年金は、全ての国民が何らかの公的年金制度の対象となっていることを意味し、1961年の国民年金制度の実施により実現したもので、基本的に20歳以上60歳未満の全ての人が公的年金制度の対象となっており、自営業等を対象とした第1号被保険者、会社員・公務員等を対象とした第2号被保険者、専業主婦等を対象とした第3号被保険者のいずれかに該当する。本仕組みでは、大きな人口を対象とした安定的な保険集団が構成されるため、社会全体で老後の所得に対応していくことが可能となっている。
年金制度の仕組みは、国民年金を基礎年金の1階部分、厚生年金を2階部分に厚生年金、企業年金等を3階部分に見立て、どの制度に加入し、どの年金を受け取ることになるかは、職業等によって異なるが、1階部分の国民年金は、厚生年金に加入している人も、同時に国民年金に加入する仕組みになっている。2階部分の厚生年金には、民間企業の会社員等が加入し、自営業者等は、任意で国民年金基金に加入することによって、自ら2階部分を作ることが出来る。3階部分の企業年金には、企業年金制度を導入している民間企業の会社員等が、原則として加入するが、制度を導入していない企業も多く、財政運営的にも非常に厳しく開催する傾向にある。
2. 年金の支給事由
公的年金は、老齢・障害・死亡を事由として、本人が老齢年金、障害年金を、又は、遺族が遺族年金の給付を受けることが出来る。どの種類の公的年金も、原則として一生涯、受給することができるため、暮らしを支える重要なものとなる事から、公的年金が内含する社会保障機能がビルトインされている。
ただし、年金の種類によって、受給額や、遺族年金であれば受給することのできる遺族の範囲・遺族の年齢等によって受給できる期間などが異なる等、支給事由に伴う条件は複雑に制度化されており、税制適用についても、障害や死亡を事由とする障害年金や遺族年金などは非課税だが、老齢年金は雑所得として課税対象となる。
また、1人1年金が原則であるが、複数の年金を併給出来ることがあり、例えば、老齢基礎年金と老齢厚生年金の受給権がある場合、2つの年金を併給できるし、障害基礎年金と障害厚生年金の組み合わせでも併給でき、同様に遺族基礎年金と遺族厚生年金の組み合わせでも併給出来る。
3.年金制度の課題
年金制度の財源としては、世代間扶養・賦課方式が採用されており、現役世代が納めた保険料を財源として、原則として65歳以上のリタイア世代に年金を支給する仕組みとなっている。この方式では、現役世代とリタイア世代の人数バランスが取れていることが重要であるが、実際には少子高齢化が急激に進んでおり、2015年は現役世代2.3人で65歳以上1人を支えていたが、2060年には1.3人で支えなければならなくなるとされている。
日本はOECD各国でも急速な超高齢化社会を迎えており、その対応はモデルケースをして注目されている。先ずは少子化対策の速やかな徹底こそが喫緊の課題であるが、現状では制度化が実現されていないジレンマを抱えていると考えざるを得ない。